RÓT by FYLGDU MÉR

INTERVIEW

クレイとは何か?

フィルクトゥミエールは、フランス中南部、オーヴェルニュ地域圏の火山帯で採掘されるクレイを、サロン「ORKA」での施術だけでなく、オリジナルバスクレイや洗顔料として提供している。クレイを輸入する「アロマフランス」を主宰する前原ドミニック先生は、現代のクレイセラピーのパイオニアである。フィルクトゥミエールが施術の柱としているクレイの生産地やクオリティの背景についてドミニック先生に伺った。

科学的なアプローチが明らかにしたクレイの効能

「クレイ」とは何だろう? 言葉を調べ始めると、その定義は分野によって異なり、実に曖昧なままなことに気づく。日本語で「粘土」と訳されるクレイは、陶器など工芸はもちろんのこと、フレスコ画を描く顔料、そして土木・建築の素材、さらには農業の土壌改良材や畜産の飼料と、実にさまざまな分野で用いられている。
美容や健康の観点でクレイが注目されるようになったのは近年のように感じるが、クレイを用いた施術は、紀元前3000年のエジプト文明のころから行われていたといわれている。ドミニック先生の母国、フランスでのクレイの最古の記録は、預言者として知られるノストラダムス(1503−1566)によるもの。中世までハーブなどの薬草やハーブウォーター、鉱物とともに、心身のトラブルに応じて処方されてきたようだ。現代でいう”自然療法”が医療行為の中心だった中世を経て、17世紀に科学革命が起きると、医学でも成分と効能を紐づける証明が求められるようになった。経験則で行われていたクレイセラピーは民間療法として位置付けられて、医療や治療の表舞台から消えていった。
20世期に入ると、今度は科学がクレイの真価を明らかにし始める。特に電子顕微鏡の登場によって、マイナスの電荷を持っていることが解明され、心身に蓄積した重金属や老廃物などプラス電荷のものを吸収して取り除き、心身の不調を改善する効能のメカニズムが科学的に解き明かされていったのだ。現代人の生活習慣や環境汚染が原因となり、不要なものが心身に蓄積して起きる不調に対して、穏やかに心地よく働きかけるクレイの効能は、多くの人を癒しているといって良いだろう

道を開いてくれるクレイ

フランスにいた頃、リウマチの一種を原因とするさまざまな不調を抱え、現代医学に頼ったが根本的な治癒に至らなかった経験を持つドミニック先生。たまたま友人の父で断食やクレイセラピーを処方するホメオパスで医師と出会い、クレイとハーブによる治療で幸いにも寛解した。自然療法のすばらしさを身をもって体験したことが、クレイセラピーやフィトセラピー(植物療法)を学ぶきっかけになった。来日後、野口整体や東洋医学のひとつ「経絡」をドミニック先生は積極的に学んだ。そしてここでもクレイセラピーとの相性の良さを実感したという。血液、リンパ液、水や気の流れ。それらが滞っているところにたまりがちな老廃物などをクレイが吸収し、流すべきものを流してくれる。だからドミニック先生はクレイを「道を開いてくれるもの」と表現する。
その後自然療法と、セラピーに欠かせない良質のアロマオイル、ハーブ、そしてクレイを広めるため、日本でセラピストを育てる学校を設立。クレイセラピーの効果を、長い歴史の中で培われてきた経験だけでなく、生産者や研究者と連携しながら理論的な解明に力を注いでいる。
従来、セラピーに使うクレイの生産地を明記するメーカーは稀だった。ドミニック先生はクオリティを追求するために、採掘所や生産体制を見学できるところを探し続け、友人の紹介で現在取引している山主と出会い、採掘所に実際に足を運ぶ念願がかなった。
「クレイは非常にデリケートです。吸収効果があるということは、目に見えない自然の中のさまざまなものに影響されるということ。採掘したクレイを雑菌が繁殖しないように水分量を抑えて乾燥できているか、保管状況に気を配っているか、そして大気汚染や土壌汚染などのない周辺環境の良さが大切です。私たちが取引している採掘所は、日本でもよく知られているミネラルウォーターを採水する火山や温泉がたくさんある、自然豊かな山岳地帯にあります。あらゆる施術用クレイを採掘するところにあてはまりますが、ここでも工業用クレイを生産しながら、人の施術に使えるクオリティのクレイの製造に対応しています。特筆すべきなのは、ローラー式オーブンでしっかりと乾燥させる生産体制に加え、粒子の大きさ、粘土鉱物の構成、成分分析などをきちんと行っているところ。私たちが望むクオリティに対応してくれるのです」。

クレイのクオリティを決める「粘土鉱物」の割合

世界で生産される粘土で、クレイをはじめ、人間の心身のために使われる割合は非常に少ない。では、人間の心身のために使われるものにはどのような特徴があるのだろうか?
クレイ=粘土の定義は、土質力学、地質学、鉱物学で粒子の大きさも異なる。クレイセラピーで効能を発揮できる粘土鉱物は、鉱物学で2ミクロン以下のさまざまな微粒子と定義されている。この粘土鉱物は、マグマが冷え固まってできた玄武岩や花崗岩のような火山岩中の鉱物が、水と接して静かに静かにイオン化して溶け出し、結晶化してできあがったものだ。水の惑星・地球だからこそ生まれた大地のギフトだともいえる。
クレイセラピーで求められる吸収のはたらきを持つ代表的な粘土鉱物は、モンモリロナイト、カオリナイト、イライト、サポナイトなど。採掘されたクレイのうちこれらの粘土鉱物の構成比が高ければ高いほど、クレイに含まれるミネラルを心身に取り入れやすく、プラスの電荷を吸収するはたらきが大きくなる。
フィルクトゥミエールが使うイライトやモンモリロナイトのグリーンクレイを生産する採掘所は、この粘土鉱物の割合が100%に近い。市場に出回るクレイの粘土鉱物構成比は20%ー80%とばらつきがあることを考えると、貴重なクレイだといえるだろう。

クレイは世界中で採掘されるが、ひとつとして同じ粘土鉱物構成比や成分を持つものはない。火山岩に含まれる鉱物の種類や、地殻変動、そして水と酸素のはたらきで起こる風化。何万年という地球の営みの記憶がつまった、土地固有の小さな小さな結晶なのだ。

Text: Aya Ogawa